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秋の読書週間 2
アーサー・ラムサン全集(全12巻)岩波書房 

小さな四人兄弟が小さなヨット「ツバメ号」で繰り広げる大冒険!

この本は、ホント!に面白いよ!!
面白すぎて、読み進めるのがもったいなくなる!
なにが、そんなに面白か?って書き出したら止まらなくなってしまいそうなので、ここに書きません!
カバーには、「小学校4年~5年以上」対象って書いてあるけど子供に読ませておくのはもったいない!
読んだことのない人は、ぜひ!

アーサー・ラムサンは、1884年にイギリスのリーズに生まれ、第一次世界大戦以前のロシアを訪れたこともあり、大戦中は従軍記者として戦地に入り、ロシア革命のときにはロシアに、中国革命のときは中国に、と歴史の動乱の中で活躍したジャーナリストでした。
少年時代に父親と休暇で訪れたイングランド北部を舞台に、その時の楽しい思い出を、小さな四人兄弟が湖畔でキャンプをしたり、ヨットに乗ったり、無人島を探検する様子に重ねた物語が、この12冊に詰まっています。

特にここで紹介するのは、

第2巻「ツバメの谷」

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四人兄弟が探検して作った地図には、「ヤマネコ島」「サメ湾」「アマゾン川」「ツバメ渓谷」・・・と文字を見ただけでも、なにが起こるんだろう?ってワクワクするような地名が並んでいます。

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その地図に、最高峰!としてそびえる山の名前は、
なんと!!
「カンチェンジュンガ」!

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4人は「中継キャンプ」を設けながら、この「カンチェンジュンガ」への初登頂を目指します!
そして、ついにたどり着いた頂上には、衝撃の事実が!!!

うぅー・・ウズウズする・・・結末を書いて楽になってしまいたい・・・!

さて・・・
なぜ、四人兄弟は最高峰に「エヴェレスト」ではなく、「カンチェンジュンガ」と名づけたのでしょうか?

先ずは、エヴェレストの歴史を簡単に見ると・・・
1852年 「P-15」と呼ばれていた山が世界最高峰であると「発見」
1856年 エヴェレストと名づけられる
1924年 マロリーが行方不明に
1953 ヒラリーとテンジンの初登頂
過去のエントリーもご参考に!
「新エヴェレスト年 第4回」

実は、1952年以前のエヴェレストが、まだP-15だった頃、世界最高峰は「カンチェンジュンガ」だったのです。
つまり、カンチェンジュンガは「前世界最高峰」
P-15と違って、ダージリンから多くの人が間近に仰ぎ見る巨大なカンチェンジュンガは、まさに当時の世界最高峰に相応しかったようです。

しかし、本が出版されたのが1930年、アーサー・ラムサン46歳のときだし、彼が子供の頃には、すでにエヴェレストが世界最高峰になっていたはずですよね?ジャーナリストであった彼がエヴェレストが世界最高峰であることを知らかったとは考えられません。

もしかしたら、当時の多くの人や特にイギリス人にとっては、「世界最高峰」はエヴェレストでも、「未知なるヒマラヤの高峰」と言えば、それ以前のカンチェンジュンガのことだったのかもしれませんね。

きっと、彼が子供の頃に父親から、そんな話を聞いたのかもしれませんね。
「カンチェンジュンガが世界最高峰だったんだよ・・・」とか・・・

アーサー・ラムサンは、あえてカンチェンジュンガを登場させて、そんな父との思い出を物語に込めたのかもしれません。