※このブログは
報知新聞社様のご協力により再掲出したものです。
尚、当サイトにおける公開は2020年1月20日です。
Retrace #1
【撮影 中島健郎 BCにて撮影】
「タケウチサン・・・竹内さん・・・」
そんな山で聞きなれない苗字で呼ばれても目が覚めないよ。
時計を見ると夜中の11時30分過ぎ。まだ夜中だ・・・。家じゃ、まだ寝てもいない。
いつもなら、アラームが鳴る前に目が爛々!としてくるのに、今日のサミットプッシュは中島さんに起こされて目が覚めた。
これまで、ファイナルキャンプの夜と言えば、ウツラウツラ・・・しながら、ジリジリ・・・と出発を待つような、短い仮眠の時間だけど、今回のファイナルキャンプが7100mと低いことと、私はここまで、調子よく順化してきているようで、かえって寝すぎた。
「うーん・・・まだ眠いよー・・・もう少し寝るから、頂上に着いたら起こしてくれる?」
寝袋の中で丸まっている私をテントの隅に荷物のように押しやり、中島さんと阿蘇さんは、まるで何年間も毎日続けてきた儀式のように、無言でジェットボイルに火を点けてお湯を作り始めた。
準備はすべて昨日のうちに済ませてある。
ダウンワンピースは着て、バラクラバ(目出帽)も被って、インナーグローブもして寝袋に入って寝てる。起きた時からヘッドランプも光っている。
寝袋も畳むつもりはない。
あとテントの中でする準備は、
● 靴を履く
● ハーネスを着ける
● オーバーミトンをする
● 満タンのテルモスをバックパックに放り込む
● サングラスを忘れずに持つ!(テントを出るときは真っ暗なので忘れそう!)
そして、テントを出たら
● クランポンを付ける
● アックスとストックを手に持つ
以上!決まりきった手順で準備をして、あとは登るだけ!
テントを出て感じた。
「暖かい・・・」
風もなく、雲なく、星々の隙間に裂け目のように黒い空があった。
猪熊さんの予報によれば、これから夜明けまでに少し風が出てくるはずだ。しかし、この暖かさを感じられるなら行ける。
今日は無酸素で登れる天気だ。
ここで待つことになった阿蘇さんに、
バックパックを担ぐ動作のついでのように
「じゃあ行ってくるね」とだけ言った。
送り出す阿蘇さんの「行ってらっしゃい!!」に鋭い緊張感が漂っているもんで、もうちょっと、ちゃんと言えば良かったかなーっと思わなかったわけでもないけど、言い直すのもメンドクサイからそのまま歩きだした。
テントからちょっと離れて頂上方向を見上げる。
なにも見えない・・・でも、いつも頂上はその先にあるはずなんだ。
そう、頂上は必ずある!登って行けば着く!登らないと着かない!
サミットプッシュ!開始!
BCで天気待ちしてるときから、ここまで上がってくるまで、知り合いやら他のチームのシェルパやらが、私の顔を見ては、同じことを言う・・・
「止めた方がいい・・・」
「今年は無理だ・・・」
「無理するな・・・」
日本だったら、耳にタコができてるとこだな。
他のチームは、どんどん撤収してきていて、荷下げのシェルパたちが、本当に山のような荷物を担いで下りてくる。
みんなが下ってくる中、私たちだけがBCから上にあがっていくので、すれ違うシェルパがみんな、それぞれに、すれ違うたびに同じことを言う。
「どこ行くんだ?」
「頂上だよ!」
「やめとけ!やめとけ!」
「なんでだよ?」
「上は相当ヤバイらしいぞ!」
「らしい?」
「いいから、やめた方いい・・・」
そんなに、上にあがらせたくないって、お前たち、なんかオレに見られたら困るものでも上にあるのか??
つづく
(連載は不定期です)
Comments
3
壮大な桜
エロ本かな〜 置き忘れたのかなぁ〜 気になるなぁ〜 夜も眠れないなぁ〜 ん〜、今日は朝までバイトだから、結局寝れないのなかぁ〜 でも、気になるなぁ〜 はぁ〜いっ 第二回、お待ちしておりますわ〜!
2
ノラ猫
ほんと、すごく素敵な写真! この連載は続きが楽しみですッ!
1
ちょめじ
う~ん、燃えますね!! 次の連載が楽しみです。 中島さんの写真、すごいですね。 きれいな天の川。