※このブログは
報知新聞社様のご協力により再掲出したものです。
尚、当サイトにおける公開は2020年1月20日です。
パキスタン入院顛末 その3
今すぐ!!出てけー!!!
おう!上等だ!!こんな病院こっちから願い下げだ!!
レスキューのとき、意識モウローの私を各国のメンバーが代わる代わる私のそばに付き添ってはみんなが口々に私を励ましてくれたんだ。
「ヒロ!もうすぐヘリが飛んでくるから、頑張れ!ヘリに乗ってしまえばスカルドまでは1時間。スカルドの陸軍病院は清潔で快適で、ドクターは山の事故に精通したスーパードクターだし、看護師さん達はパキスタン中の美女を集めた最高の病院だ!その病院に入ってしまえば怪我なんて治ったも同然さ!替わりにオレが入院したいくらいさ!!」
なにが最高だよ??何一つ正しくないじゃないかー!!みんな、ウソばっかりだ!
何のためにここまで頑張ったんだよ。
せっかく山で助かったのにここで死んでしまうぞ。
みんなが、同じようなことを言っていたのはきっと、かなり状況の悪い私を必死に励ますためだったんだろうけど真実を知ったときの落差が・・・・。
私も「パキスタン中の美女」あたりで気がつけばよかったんだけどね。本当に意識モウローだったからな・・・・。
ディルク、出よう!
今日の夕方にはイスラマへのヘリが飛ぶはずだ。遅くったって明日の朝には飛ぶだろう?
こんなところにいなくったって、他の市民病院か普通のホテルだっていいんだよ。ヘリが飛ぶまで待つだけなんだから。
短い間でしたがお世話さまー!
Never see you again!!
キャプテン・ナントカ、超むくれっ面で
Good Luck!とか言いやがる!ムカつく!!
すかさず、キャプテン・ナントカがA4の紙にびっちりとなにやら書いた書類を持ってきて、ここに2人のサインをしろ!という。
とても全部は読んでられんが、まあ、こんな感じ。
この無礼者の馬鹿チンは偉大なるパキスタン陸軍軍医であるキャプテン・ナントカの医師としての適正な判断を無視して、必要な処置を拒絶し、自己退院をするものである。云々・・・。
つまり、今後どうなっても知らないよー。こんな馬鹿たれを受け入れる病院がこの偉大なるパキスタンに一つでもあるわけが無いはずだ!って感じ?
つまり、こんなことらしい。
キャプテン・ナントカはこの病院で本当にエライ人だったのだ。
そのエライ先生がお付の部下多数にその「気胸」の処置をご披露したかったようなんだな。
さあ、みんな見てろよ!こうやってやるんだゼ!カッコいいだろー!みたいにね。10人も引き連れて・・・。
それが、どたん場で部下の前で、オマエの手術なんかマッピラ!ごめんでーす!みたいに、なんの事もない外国人で私のようなコワッパに拒否されちゃったもんだから、メンツ、メンボク丸つぶれー!!って感じになったんだろうね。
あの怒りようはただ事ではなかったからね。
また、これは後から聞いたことだが、パキスタンではとにかく手術をしたいらしい。しなくて良いようなことも手術する習慣っていうか慣わしっていうかそういうもんってことになっているそうだ。つまり手術する方も、される方も手術こそが最高の医療手段だ!!って意識なんだそうな。怪我自慢、病気自慢の延長みたいな??手術したんだぜ!!みたいな?きっと風邪でも手術するんじゃない?
そして、病院も医者も手術こそが儲かるらしい。あべこべに手術以外は儲からんってことなんだってさ。
悪いけどあんたのメンツより自分の命のほうが大切だからね。ごめんあそばせー。
病院から出て行くにあたって、陸軍病院の担架は貸さない!ってまで言われて、エージェントのスタッフが急遽、買ってきたコンパネ(ベニヤ板の厚いの)に乗せられて強行退院!!
その後、私はボロボロのハイエースのオーブンの様な灼熱の後部座席にベニヤ板ごとくくりつけられて延々と数時間、スカルドのデコボコ、ガタガタ道を5件だか6件だか(もう正確には覚えていない)の病院を、たらい回しにされるのであった・・・・。
ある病院はすげー汚かったり、外国人お断りとか、例のキャプテン・ナントカの書類を見て、追い払われたり・・・。
ちなみに、この時、私がどんなだったかを説明しておきましょう!
とにかく痛い!!背骨が折れてるんだから当たり前だ!しかし、背骨だけが痛いんじゃすまない。とにかく体中が痛い!!手を動かしたって背骨が痛い。足を動かしたって背骨が痛い。呼吸の度に胸が痛くて背骨が痛い。
もう最悪!!
全くの寝たきりで上半身を起こすどころか頭を持ち上げることさえ困難・・・。なんてこったい・・・。
オーブンのような車内で意識は遠のいていくのだろうか?眠ってしまったりしていたのだろうか?もう、意識と記憶は途切れ途切れだ。
いったい、どれほどの時間がたったのだろうか?
ディルクー・・・いったいどーなってるんだよー・・・。
ヒロ!!こいつら、おかしいよ!!どの病院にいっても門前払いだぜ!!しかも、この小さな車に10人以上のパキスタン人が乗り込んでるんだけどエージェントの関係者は2人だけ、他のヤツらはただの野次馬なんだよ。パキスタンのシステムってのが全く理解できないぜ!!
そして、私はひたすら痛い背中をかばう事もできず、ひたすらコンパネの上でデコボコ道の振動の痛みにうめき声を上げていた。
そして、いつしか気がついたとき、ある病院のひと部屋に担ぎ込まれていた。
そこは、いわゆるお金持ち相手のプライベート病院で、ついにそこのドクターが私を受け入れてくれたのだ。受け入れてくれったっていうか部屋を一つ貸してくれたって感じで。
私が痛がるのと、ベッドが粗末よくないので、コンパネを担架に乗せてそれをベッド代わりにして、ようやくデコボコの振動から開放された・・・。
エージェントの責任者は満足げに、ここの院長はオレの古くからの親しい友人だ!って・・・。
じゃあ!最初からここに連れてこいよ!!!
本当にパキスタンシステムってのがわからん・・・。
でも、もうどうでもいいよ!今日の夕方か明日の朝にはイスラマバードに戻るんだ!それまでの我慢さ!!
しかーし!!
そんな甘い希望は見事にコッパミジンコに打ち砕かれるのでした・・・・。
つづく
Comments
1
がんばれ!竹内さん! パキスタンの理不尽に負けるな!