※このブログは
報知新聞社様のご協力により再掲出したものです。
尚、当サイトにおける公開は2020年1月20日です。
パキスタン入院顛末 その9
なかなか飛ばなかったヘリだけど、飛んでしまえば、順調にイスラマに向かっている。
できることなら、窓から例のカラコルムハイウェイを見下ろしてみたかった・・・。
ヘリの床に寝かされた私を他の乗客が、ぐるりと取り囲むように座っている。
軍のエライ人の家族かな?小さな子供連れの家族が3組。きっとスカルドに避暑にきていてイスラマに帰ろうとしているのだろう。
きっと、こんな怪我人が乗ってくるとは思ってもいなかったんじゃないかな?
楽しい夏休みも終わり、これから家にかえろうという和やかな雰囲気を私がぶち壊したような空気が流れている。
テレビのインド映画から抜け出てきたよーな!かっこをしたオバハンは、
なんで、このワタクシ!がこんな小汚い怪我人と一緒のヘリの乗らなければいけないのよ!っていう視線を 今、パキスタンで流行りのサングラスの奥から発していた。
スミマセンね・・・。お気持ちお察しいたします。
ヘリの代金は結構なので今日のところはなにとぞ、穏便に・・・・。
私たち3人以外に関係者は我々のチームのライセンスオフィサーである、キャプテン・ガッシュットが同乗していた。
まだ若い彼は、今回、はじめてのライセンスオフィサーとして同行した我々のチームでおきた、この事故にも取り乱すことなく、とても冷静にそして献身的に対応しくれた。
念のためにと使用している酸素の効果と心地よいヘリの振動に、うつらうつらとしていると平出くんと小松ちゃんから声をかけられた。
イスラマに着きましたよ・・・・。
やったー・・・着いた・・・
他の乗客が無言でぞろぞろと降りていった後、私はようやく外に担ぎ出された。
炎天下の灼熱のヘリポート。
ああ!この暑さは確かにイスラマだ!
ようやう、ようやく、たどり着いた、憧れのイスラマ!!
もう、私の頭の中では「イスラマ=日本」くらいの縮図になっていたのだ。
その炎天下の中、スーツにネクタイをキッチリ締めた、わかりやすい格好の人が待ち受けていてた。
あー!!日本人だ!!日本人がいるよーう!
平出くーん!日本人がいるよ!!
僕たちも日本人です・・・。
大使館の渡辺さんが出迎えに来てくれていたのだ。
私のようなバカな日本人のせいで、この炎天下の中、余計な仕事でスーツにネクタイを締めてこんなところにいなければならないなんて、なんて不幸なんだ・・・。
大丈夫ですか?すぐに病院に向かいますから。
平出くーん!日本語だよ!ここ日本語圏だよ!
僕たちも日本語で喋ってるじゃないですか・・・・。
竹内でございます。誠に申し訳ありません。
こんなバカのためにホントに申し訳ありません。収めるべき税金はちゃんと納めておりますのでなにとぞ、見捨てずによろしくお願いします!
大丈夫ですよ!大丈夫ですよ!
大丈夫!なんて言葉を聞いたのは何年ぶりだろう?そもそも、私は人から「あんた大丈夫?」と聞かれることはあっても、大丈夫ですよ!なんて言われたことなんて無かったよ・・・。
ああ、なんだか大丈夫な感じがしてきたよ。
私が乗せられたコンパネは再び神輿のように担ぎ上げられ、救急車のような車に乗せかえられようとしていた。
ふっと、私の頭の近くを支えている手の主の顔を見やると、エライ、いい年の爺さんが泣きそうに深刻な顔でプルプルと必死にそのコンパネを支えている。
頼むよ、落とさないでくれよ!
って、よく見ると、それはアシュラフ!アシュラフ・アマンじゃないか!!(パキスタンの英雄にしてパキスタン人で最初のK2サミッター)
今回の事故、そして今日のフライトを聞いて駆けつけてくれたのだ。
アシュラフ!危ないからいいって!腰とか痛めると困るから!もういい年なんだから!
背骨を折った怪我人が心配することではないが、久しぶりの対面がこんな有様で申し訳ないし、情けないよ。
あくまでも救急車のような車に乗せられ、向かうはパキスタンで最高級!病院シーファー病院!!期待が高まる!
しかし、車の中は相変わらず、同乗した平出君が必死に押さえてくれていないと転げ落ちてしまいそうな、システム!怪我人本人もどっかにつかまっていないと危険!
もうちょっと!もうちょっと!
もうすぐ、タコやヒラメが舞い踊る!最高級ラグジャリー病院!シーファー!!
そして、ついにその病院に到着!
ベッドに乗せかえられると・・・
おおー!!これは!
清潔なシーツがかけられたベッドは真新しい日本製のパラマウントベッドじゃないか!!電動リモコンの説明とかも日本語で書いてある!
処置室に運び込まれると、
おおー!!これは!
いろいろな医療マシーンが並んでる!
まるで病院みたいだ!ベッド脇にあるなんだかの装置にはやはり日本語が書かれている。
おおー!これは!
行き行く看護師さん、みんな美人―!!制服もカワイイー!!
やった!これなら、本当に大丈夫そうだ!
そこに、日パトラベルの大住さんが日本食を抱えて駆けつけてくれた。
おいおい、汚い顔だなー!
ほら!顔をふきな!(実際大住さんはこんな風にしゃべる)
そして、これまで、ずっと電話で私を気遣い、イスラマのこの病院への受け入れ態勢を整えてくださった小林先生が、挨拶もそこそこにスカルドの病院で撮影したレントゲンを鋭い目でチェックし始めた。
おおー!カッコいいー!!
見渡せば、日本人ばかりだ!日本語ばかりだ!これはすごいぞ!夢のようだ!もしかしたら、ここは、もう日本なんじゃないか?
だったらいいな・・・。
次回、闘うドクター、小林誠!大乱闘!
つづくー!!