※このブログは
報知新聞社様のご協力により再掲出したものです。
尚、当サイトにおける公開は2020年1月20日です。
パキスタン入院顛末 その10
小林誠先生はJICA(国際協力機構)で小児予防接種プロジェクトのチーフアドバイザーとしてここパキスタンで昨年の11月から活動されているんだそうだ。
以前にも2年ほどパキスタンで活動されており、こちらの医療事情には表からウラまで精通しておられる。
本来は北西辺境州に在住していたはずだったが、この7月上旬から急速に治安が悪化し、イスラマバードに避難していたためと、ちょうど日本大使館の医務官が帰国している最中だったことから大使館からの要請でこんな面倒に巻き込まれてしまった。
また私のために不幸になった人がここに・・・。
小林先生はすでに日本や南極のドクターたちと、ここでどのような処置を私にするべきかを入念に打ち合わせをされていた。
金田先生(整形)、柳下先生(整形)、増山先生(呼吸器)、南極昭和基地の志賀尚子先生(救急救命)、国立国際医療センター(小林先生の所属先、奇遇なことに36年前に私が生まれた病院)の先生方、JICAパキスタンの医療関係者・・・・が総かかりで体制を固めていた!
まさにドリームチームだ!
あと足りないのは葬儀屋か?
すぐに、小林先生は私の足に麻痺や障害がないかをチェックし始めた。
ここは動きますか?これは感じますか?
針で突っついたり・・・、と、見せかけてフェイント!とか。
ウン!思っていたより状態はいいと思います!
ほっ・・・・・。
そして、小林先生の指示でレントゲンやらCTやらの撮影が開始された。その設備は日本の大学病院となんら遜色はない。
特にCTなんて、数秒で撮影が可能な東芝製のまさに最新鋭機だ!
格差やらも、ここまでくれば諦めがつくか?
レントゲンの結果、すぐに気胸の処置を行うことになった。
小林先生立会いのもとその病院のパキスタン人ドクターによって処置が始められた。
小林先生が見ていてくれるから安心して任せられるけど、あのスカルドでの恐ろしかったこと!
しかも、スカルドと、ここでは、手順も用意されている道具もまるで違う!
そもそも、お付きの部下が10人とかいない。
そのパキスタン人ドクターは一人でテキパキと準備を整えると、すぐに処置に取り掛かった。左胸にメスを入れるとチューブを差し入れプラスチック製の箱型の装置(スペイン製)につなぎ吸引を始める。(ドレナージ)
小林先生もこのドクターは丁寧にやってくれてますよー、大丈夫ですよって言ってくれている。
スカルドではこんな装置も設備も無かったから、応急処置的にチューブだけ入れて、あとはそのまま、ヘリが飛ぶまで放置されたに違いない!
まったく、恐ろしい話しだ。
ドレナージの処置が終わって、やれやれ・・・。
しばらくすると、小林先生がデジカメを片手にどこかから戻ってきた。
先ほど撮影したCTの画像をチェックし、それをメイルでドリームチームに配信し診断を受けるためデジカメに収めて戻ってきたのだ。
日本と南極ではその画像を、私本体の状態よりも首を長くして待っているらしい!
いま、CTを見てきました・・・・。
思ったより悪いです・・・・・。
がーぁぁぁぁぁーんぁぁぁんん・・・・・!!!
さっきの「ほっ・・・・」はまたっくどこかに行ってしまった・・・・。
デジカメに収めたCTの画像を見せながら説明をしてくれるのだが・・・・。
打ちのめされた私の耳には入らない・・・うつろな目にはうつらない・・・
人を不安のズンドコに叩き落しておきながら、そんな私をよそに小林先生はそのデジカメでアシュラフ・アマンと小松由佳ちんとベッドで叩きのめされている私の3人のK2サミッターを写真に収め嬉しそうだ・・・・。
そして小林先生がベッドから離れたすきに、また別のパキスタン人ドクター(脳外科医)がやって来た!
さあ!早速、背骨の手術をしましょうー!!
やったー!いい獲物だー!やってみたかったんだよね!背骨の手術!
NO!!
日本ですでに準備をしているから、ここでは背骨の手術はしない!
とにかく、日本に帰るまで入院させてくれればいいんだよーん!!
この状態では日本にも帰れないから、手術が必要だ!とにかく手術だ!手術だ!とりあえず手術だ!
とりあえずで背骨の手術ができるか!
その昔、日本の有名な登山家(面識が無いで実名は伏せます)がやはりこっちで落ちて足を複雑骨折して、パキスタンで手術したら、手術後ドクターが
えーっと・・・骨が一個余っちゃったんだけど・・・・動くからいいよね?だって!!有名な話!
おいおい!子供がラジコン分解して遊んでるのとはわけが違うんだぞ!!
結局、その有名登山家はいまだに足を引きずっているらしい。
ここで、背骨の手術なんかしたら、潰れた背骨をコーラの空き缶に入れ替えられてしまうに違いない!似てるからいいじゃーん!違うのは色だけだから、大きさは潰して合わせておくからさ!とか言われて。
そのドクターは寝ている私の頭上から威圧的に早口の英語を浴びせかけ攻め込んでくる、つい、聞き損ねて誘導尋問に引っかかってYesとかフェイントの否定疑問のNoなんかを答えたら、すかさず、麻酔をかけられてどうかされてしまいそうな意気込みだ!
打ちのめされている場合じゃない!頭はフル回転!耳から煙が出そうだ!
そこに、小林先生が帰ってきてくれた!!助かった!!
すかさず割って入って徹底抗戦を仕掛ける!
この小林先生は興奮してくると、英語に接尾語として日本語の「ね」とか「でしょ!」がつく。
そして、ついに撃退!!
しかし!!相手もそうそう引き下がらない!最後の切り札、「パキスタニ・ジョーカー」を用意していた。
手術をしないなら患者じゃないから、出てけー!!
おいおい!また、それかよー・・・・勘弁してくれよ・・・・イスラマでもかよ・・・。
なんだかもう、あまり驚けない・・・。
小林先生は、背骨の手術はしなくても気胸の処置をして、ドレナージを継続しなければならないんだから入院が必要だと食い下がるが・・・。
オレ!エライ!気分、害した!だから、ヤダ!!って感じで、まったく取り合わず、処置室から出て行ってしまった!
闘うドクター、小林誠!医療の理不尽は許さない!!
そのドクターを追いかけ直談判を続けていた。
しかし、処置室ではドクターの意向を受け、私のベッドは完全に放置されてしまった。
そして、痛み止めが切れてきた・・・・。
痛み止めは切れてきてしまうと、もう加速度的に痛みが襲ってくる!
さらに、気胸の処置をした傷口の痛みも追加されている。
スカルドで買ったボルタレンは少し残っていたはずだが出発のバタバタで見あたらない。それ以前に、この病院に入ってまで痛み止めの心配をしていなかった。
くぅぅぅぅぅー・・・・・・!!痛っつつ・・・・・・!!
先ほど、あれほど心の支えにしたパラマウントベッドの手すりを渾身の握力で握り締めて、耐える・・・。
脂汗が吹き出る・・・。
付き添っていた平出くんが、痛み止めの注射を打ってくれるように頼みにいくが、まったく取り合ってくれない。
竹内さん!大丈夫ですか?
大丈夫・・・・・耐えてみせる・・・・・うぅぅ・・・・。
その痛みの絶頂期に携帯に日本の事務局から電話がかかってきた・・・・。
なんのようですかーっ!!
どうした???
痛いんですぅぅぅー・・・・・!!後にしてもらえますかぁぁ・・・・・!
この電話も、日本でいらん憶測を呼ぶことになる・・・・・。
うぅぅぅ・・・・・・・!
ダメだ!!限界だ!!
平出くん!パキスタン人はダメだ!小林先生を呼んできてくれ!!
平出くんは直談判中の小林先生を探して痛み止めの注射をしてくれるよう、そのパキスタン人ドクターに頼むが、返事は・・・
もう、時間外だからダメ!
小林先生、さらに激怒!!激昂!!
ついに、そのドクターの根負けにより私の入院と痛み止めの注射を勝ち取ったのだ!!
勝者!小林 まこーとぉぉー!!
看護師さんが痛み止めの注射を打ってくれると、クラクラ、ふわふわするような感覚とともに痛みが引いていく・・・・。
はぁー・・・効くゼー!!
いったい、何時間、処置室の放置されていたのか?
ようやく、ベッドが運び出され、病棟への栄光のエレベーターに乗せられるのだ!!
大住さんが言ってた!!ここの看護師さんはパキスタン中の美人を集めているって!
うぅぅん??どっかで聞いた話だな・・・。
ところでさ・・・これ、小林先生がいなかったら、どうなってたの??
ぜったい、臓器を抜かれて、病院の裏のゴミ捨て場とかに捨てられたに違いない!!
しかーし、これまたエライところに入院してしまったことを思い知らされるのだ!
つづく!
Comments
2
編集部より
「ないしょ」さんのコメントに小林誠先生ご本人から説明をいただきましたのでお伝えいたします。 小林先生が関わられているプロジェクト名は、JICA EPIポリオ対策プロジェクト(Expanded Program on Immunization)「予防接種拡大計画」と少々難しいので、広くは「小児予防接種プロジェクト」と説明されているそうです。「ないしょ」さんのコメントにある「小児麻痺予防接種プロジェクト」は正式名称ではないとの説明をいただきました。 なお、これまで「ポリオ=小児麻痺」と理解されることが多かったのですが、予防接種をうけていなければ大人も感染するので、現在は「小児麻痺」という名称は使われておらず、「ポリオ」が正式名称として使用されているそうです。
1
ないしょ
冒頭に誤記がありましたよ。 (誤)小林誠先生はJICA(国際協力機構)で小児予防接種プロジェクトの... (正)小林誠先生はJICA(国際協力機構)で小児麻痺予防接種プロジェクトの...