数々の困難を乗り越え、幾多の苦難を振り払い、なにはともあれ、入院できて本当によかった・・・。あとは日本行きの飛行機に乗りさえすれば・・・・。

 いま、こうして個室の病室に運び込まれて寝ていれば、インドの腰ふりダンスばかりのテレビのスイッチさえ入れなければ、設備、見た目は本当に日本の大学病院となんら変わらない。

 平出くんが備え付けのソファーで寝起きしながらの24時間看護サービスも整っている。

 しかし!そのバーチャル日本の病院気分を思いっきりぶち壊すのはこれだ!

 なんと、1日に、まあぁ、最低でも40人ぐらいの病院の関係者?が病室を出たり入ったりすることだ。

 先ず、早朝から看護師さんが検温と血圧を測りに来て、一日4~5回くらい来るのだが、まあこれは必要だからいいとして、ドクターが毎日5~6人はお供を連れてやってくる。まあこれですでに10人以上。

 それから、すごいのはお掃除のスタッフ!

 床をはく人、床を拭く人、ガラスを拭く人、ベッドの手すりを拭く人、トイレを掃除する人、ゴミを回収する人・・・。全てが分業?でこれも1日に2回転ぐらいする。

 さらに、面白いのは「蝶ネクタイ」をしたおじさんが、食事のメニューの注文を聞きにくる。

 そう聞くと、へー・・いいサービスだね!って思うかもしれないけど、注文したとおりにメニューが来るのは3回に1回ってところか?

 もちろん、その食事を届けに来る人と、下げる人は別だ。だから、時々、まだ、食事が届いていないのに、下げに来たりする。

 さらに、御用聞きが来る。なんか買い物とかないですかー?

 そして、毎日、アンケートが来る。

 なにか、病院にご意見ございませんかー?

 頼むから、人が来ないようにしてくれ!!

 寝ていても、叩き起こされるからね。まったく休まらない・・・。

 ちなみに一人、すげー、怖い看護師さんがいて(若い女性)夜中の3時ごろの検温にこの人が来ると、ばばっ!と病室の電気を全てつけて、寝ている私の頬をパンパーン!と引っ叩いて叩き起こし、検温と血圧を測ると、そのまま電気つけっば!病室のドアあけっぱ!で出て行っちゃう!

 ふざけんなよー!!とナースコールを押すと、それは壊れていました・・・・。

そして、さらに、なんだかわからん人が来る。

 毎日2~3人は、病院の関係者なのかなんなのかわからない人が部屋にふら~っと入ってきて、

 あー!外国人がいるぞー!!みたいな顔して病室の中を見渡して出ていく・・・。あれは、いったいなんだろうか?謎だ。

 一度、いったい一日に何人の人が出入りするか数えようとしたけど40人くらいで、数えるの忘れて止めてしまったよ・・・。

 こういうの、ワークシェア?って言うの??それとも、ただのパキスタン方式??

 ああ、それから、部屋付きのボーイさんがいる。

 ボーイさんの仕事は患者さんの身の回りの世話を引き受けていて、例えば、トイレの介添えとか、ベッドメイキングをしてくれたり、検査に行くときにベッドを押していったりと、こまごまとしたことをしてくれる人で、個室の場合は、部屋付きで一人のボーイさんが専属でついてくれる。

 もちろん何人かが交代なのだが、その中に一人、名前を忘れてしまったんだけど、すごくいいヤツがいてさ、本当にスマイリー&フレンドリーで丁寧で親切だったなー。

 日本に連れて帰りたいくらいだったよ。

 小林先生も日々の「病院の戦い」に疲れた後に彼に会うと、いつも、

君がこの病院の院長になればいいのに・・・

 とつぶやいておりました・・・。

シーファー・ホスピタルとは書いてあるけれど、ホスピタリティーは無いのだ。

 さて、もう、すっかり加藤くんのことなんか、もう、いいか?って感じで忘れてましたね。

 加藤くんどこ行っちゃったんでしょうか?ね。

 実は、加藤くんは車の中で寝ている間にパキスタンに潜伏していたアルカイーダに誘拐されて、気がつくと目的地のスカルドとは、まるでかけ離れたギルギットに連れ去られていたのだ!

 いやいや、そうではなくて、途中で道は二手に分かれ、右に行けばスカルド、左に行けばギルギット。

で、どうやら、スカルドに向かう道が、ここではよくある土砂崩れで通行止めになったので、運転手さんが「気を利かせて」止まってるよりは、進んだほうがよかんべーってことでギルギットに行っちゃったらしい。

 ギルギットに着いて、運転手さんに起こされて、

 ここはどこ?

 ギルギットとスカルドの共通点はパキスタンの田舎町ということぐらいで、緯度経度と目的地としてはギルギットとスカルドほどに、まったく大きく異なる。

 ええぇぇー!!なんてこったー!!寝てしまったからエライことになったー!!

 と思いながらも、加藤くんの頭の中はフル回転しているようなフリをしていたが、 きっと、スカルドに着くのが遅くなるぐらいに思っていたに違いない。

 そして、事務局に電話すると・・・。

えーっと、ちょっとアルカイーダに誘拐されちゃって・・・。

 古野さんが、

あー、はいはい。さっきヘリが飛んで、竹内はイスラマに向かっているので、そこから、即刻、また2日間かけて、すぐにイスラマに戻ってください。アルカイーダさんによろしく。

がーんんん!!

 そして、加藤くんはあのカラコルム・ハイウエイで脳みそと内蔵をシェイクされるだけに丸々4日間を費やすのでした・・・。

 恐らく、カラコルム・ハイウエイ史上、もっとも無意味な移動としてその歴史に加藤君の名前は永遠に刻まれることになるでしょう。

 ちなみに、その時の加藤くんの心理描写は私の勝手な想像で書いておりますが、まあ、概ね近からず、遠からずと思います。

あしからず、ご了承ください。

つづく!