※このブログは
報知新聞社様のご協力により再掲出したものです。
尚、当サイトにおける公開は2020年1月20日です。
パキスタン入院顛末 その13
しかし、背骨を折るってことは、人の尊厳に関わるね・・・。
加藤君にパンツを脱がしてもらったのは、もう一生涯、消し去ることができない屈辱的な心の傷だよ・・・。ああ、もう取り返しがつかない・・・。もしかしたら、加藤くんに一生、ゆすられるのかな・・・。
病院で検査したCTやレントゲンは逐一、小林先生からドリームチームのドクター達にメイルで送信され、所見や指示がバンバン入ってくる。
南極の志賀尚子先生は昭和基地で怪我人も病人も出ず、ヒマで、手伝いで建設班の生コンをこねるてばかりのため、このパキスタンから届いた画像に大興奮!って感じで、
これはスゴイ怪我だー!大変だー!大変だー!
と他人事を思いっきりエンジョイして、
ステキなお写真をありがとー!お礼に!とかいって、昭和基地の近くのペンギンの写真を沢山、暑さ払いにどーぞ!と送ってきた。
果たして、この私の状態はいったい、深刻なのか?ペンギンの写真を眺めていていい程度なのか・・・・?
ちなみに、この志賀尚子先生の個人的趣味?により、再三、尿管におしっこのチューブを入れることが提案されていましたが、私がかたくなに拒否!
大変、ご不満なご様子でした・・・・。
さて、今の問題はここから、いかにして日本に帰るかだ。
車や船やまして電車で帰るわけにもいかないこの地球の果てから日本に帰るには飛行機に乗るしかない。
イスラマから東京へはタイ航空かご存知のパキスタン航空かの2つしか選択肢はない。
背骨を折って絶対安静が必要で肺にドレナージのチューブが刺さったままの人をどうやって、一般の航空機に乗せるのか?
それ以前に、航空会社がそんな大怪我人を受け入れてくれるのか?
事務局と日・パトラベルの大住さんが、必死の交渉を続けていた。
タイ航空は即答!二つ返事で断られて、残るはパキスタン航空のみ・・・。
もし、パキスタン航空に断られてしまったら、残る選択肢は2つ・・・・。
一つは、考えたくもない話しだけれど、パキスタンで手術を受けて治るまで帰れないという最悪の事態!!しかし、治るまでって、ここでは絶対治らないよね・・・ってことは帰れないってことだ・・・。
パキスタン人ドクターのモルモットになるわけにはいかない!
それだけは、なんとか避けなければ!
もう、一つ、最後の手段はプライベートジェットをチャーターするか?
プライベートジェットのチャーターには約1500万から2000万が必要だ。
しかし、冷静に考えれば、パキスタンで手術するくらいなら、2000万なんて安いもんだ!
安くないけどさ・・・。
だからこそ、なんとか、どんな手を使っても?パキスタン航空に受け入れてもらわなければ!!
もし、パキスタン航空が受け入れてくれたとしても、機内の座席を取り外し、ベッドを備え付けてもらわなければならない。それはすぐにできることではなく、カラーチの整備工場であらかじめ整備しなければならないので航空会社が受け入れてくれても、すぐに準備が整うわけではない。
日・パの大住さんは何人もの担当者と何度も、何度も根気強く交渉を続けてくれていた。
残る関門はこの飛行機だけのはず・・・・。
日本ではすでに東京医科歯科大病院の柳下先生が受け入れ態勢を整えてくれていた。
なんとかそこにたどり着けば!今度こそ本当の!
美女に囲まれた三食昼寝付き!の夢の入院生活!が待っているはずだ!(今まで入院ってしたことない)
以前、私がエヴェレストで最近、はやりの突然死になりかけたとき、頭が悪くなって?(低酸素脳症)と軽い凍傷になったため、プロスキーヤーの三浦豪太さんから、柳下先生をご紹介していただいたのだ。
東京医科歯科大病院には高気圧治療という設備があり、柳下先生はそこで私の治療をしてくださっていたのだ。
そして、あの切羽詰まった状況で、ふっ!と柳下先生の顔が脳裏をよぎったのだ!
なんでって?
まあ、あなたも、柳下先生に会えばわかるよ。
ああ!柳下先生のあの優しい笑顔で「大丈夫ですよ」って言われたい・・・ああ、言われたい!
ダメだったらどーするんだ?って?
ダメでも柳下先生に言われれば納得できる。うん!納得できるよ!
なんで?
いいーんだよ!フィーリングなんだよ!直感なんだよ!
でも、結果的にその時、柳下先生の顔が思い浮かんだから、その後、東京医科歯科大病院でしかできないとも言われる、最先端の手術方法で手術をしてもらって、ここまで回復できたのだ!
あの時、先生の顔が想い浮かばなければ、そのまま、例の都内某有名大学病院に運び込まれて・・・・どうなっていたことやら・・・・・。ああ、恐ろしい。
やはり、登山は直感と感性だね。
ちなみに、高気圧治療とは?
一時、話題になった、高圧高酸素カプセルってありましたね?カプセルの中に入って圧力を高めて酸素を体に取り込んで怪我の治癒を促進したり、疲労回復を促進したりする機械。
あれのプロ仕様戦闘型です。
http://www.tmd.ac.jp/med/hbo7/index.html
見た目と規模と構造は潜水艦って感じで、中には15人以上は入れるかな?http://www.tmd.ac.jp/med/hbo7/te/te.htm
中に入る際には発火の可能性のある物は持ち込めず、服も専用のものに着替えます。そして、鋼鉄製の分厚いドアが、がぁーぁぁ!ガッチャンン!!と閉まると、中の圧力を高めていきます。持ち込んだペットボトルの蓋を開け忘れると、ボコォォン!!ってスゴイ音を立てて潰れる!
ちなみに、私はその鋼鉄製のドアががぁぁー!と閉まるときには「サンダーバードのテーマ曲」を心の中で口ずさんでおりました・・・。
内部は酸素で満たされ約2気圧まで圧力が高められ、されにマスクから酸素を体に取り込み体の奥まで酸素と取り込んで、細部の一つ一つを活性化させ治癒能力を高めるというもの。ダイビングの減圧症の治療も行われています。
これは、確かに効き目がある。だって、出た直後、目が良く見えるよ!特に、エヴェレストのあとは体が弱っていてから、その回復のスピードはかなり早かったと実感しましたね。
そして、なにより、気持ちいいんだ!
酸素の空間に入ってるって最高!クセになるね。ここに住みたい!って感じ。
ところが、今回、気胸になってしまったから、もう二度とあの快楽の空間には入れなくなってしまった・・・。そればかりが、心残りだよ・・・。
さて、志賀先生から送られてきたペンギンを眺めながら、加藤くんとともに日本に帰る日を夢見て過ごしておりました・・・。
パキスタン航空!頼むよー!ここでこそ、いつものパキスタン・プライド?を見せてくれ!
つづく!