定期連絡でーす。今日も飛びませーん…

 ヘリの手配より、住民票をこっちに移す手配をしてもらったほうがいいかもしれませーん…

Takeuchi

 あきらめムード満点の日々が過ぎていく……。

 事務局からの連絡によると、明大山岳部OBで「山岳部の誉!」としてご高名な登山家!加藤慶信さんが私ごときウスラとんかちのために邦人保護、帰国支援の使命を負って、この現地まで向かっているという!なんと言うことだ!

 加藤さんがご到着されるまでに土下座ができるようにしておかなければ!! 加藤さんに土下座するためなら背骨の1個や2個!

 それとも、加藤さんに超!リスペクト!!で頭を丸めるか?

 しかし、加藤くんには気の毒なことだ…。きっと、事務局の御大から、加藤いけるか? なんて話ではなくて、加藤行け!! 以上!! ってな話かな?

 悪いことしたな……。

 うん?? タイ航空でイスラマに向かってる? バンコクで一泊?

 あー…、それは本人にとっても悪い話ではないということか…。なるほどね。じゃあ、みっちり働いてもらおうかな!

 イスラマから陸路でスカルドに向かい25日に到着予定とのことだ。

 さらに、行きの飛行気で一緒だった、やはりご高名な登山家であらせられる、平出和也さんとあの小松由佳さんがシスパーレでの登山終了後にちょうど私の事故の知らせを聞き、こちらに向かっているという。明日の到着らしい。

 着々と包囲網が張り巡らされていく。

 もちろん、みんなが来てくれれば、これほど心強いことはないけれど、とりあえず加藤くんが来たところで怪我が治るわけでも、天気がよくなるわけでもない。

 もしかしたら、その後もずーっとこのままだったら、加藤くんと一緒にこっちに住民票を移さなければならないともかぎらん。

 それだけは避けなければ?

 イスラマに戻るのに、この当てにならないヘリしかないのか?

 来た時と同様にあの悪名高いカラコルムハイウェーを陸路で帰る方法もある。しかし、普通に乗っていても時々、頭を車の天井にぶつけるようなデコボコガタガタ道を丸々2日間もこの体で乗っていられるか?

 ヘリポートからここに来るまででもエライことだったし、トイレにも行けないような体で??

 2日間は無理でも1日ならどうだ?

 ここからギルギットまでなんとか出て、そこから飛行機でインドのデリーに行くという方法もあるか?

 インドはご存知のように医療先進国だ。ここよりは間違いなくマシだろう? しかし、デリーに出るなら日本に帰ったほうが絶対にいい!

 うーん……。

 事務局の古野さんもまるで動けないこの状況を打開するためにも陸路での移動も考え始めていた。

 そこで、エージェントの責任者に陸路での移動も考えてるんだけどねー、と聞くと……

 もちろん! それはすでに考えていた! ヒロが言い出すのを待ってたんだよ! すぐにだって(ボロボロの)ハイエースの中を改造して(コンパネで)スペシャルベッドを作るよ! すでに材料は下見してあるから!

 あー、はいはい…ありがとねー。

 ちなみに、先ほどから交代で私に付き添ってくれているスタッフはとっても親切で本当によく助けてくれる。話によると以前、病院に勤めていたんだそうな。

 そんなところに、ディルクがホテルでたまたま一緒になったというスイス人のドクター・ダニエルを連れてきてくれた。

 ハイ! ヒロ! 君のことはウェブで見たことがあるよ! 前も死にかけてなかったけ?

 おっしゃるとおりですー…。

 彼は例のレントゲンを見ながら骨折の状況を説明してくれた。

 背骨はかなりヤバイけど、現在、麻痺も痺れもないのなら安定していると言えるだろう…肋骨はまあ、放っておくしかないけど、問題は気胸だな……。

 背骨が折れたって死にはしないけど(麻痺や不随がでても)、肺は場合によっては死ぬからな…。

 彼は持ってきたパルスオキシメーターを私の指にはめ込むと………

 あれっ???

 えっ?? ダメ??

 なんと! これだけ骨折していて、しかも肺が片方潰れているのに、私の体は今だ、健気にもSpO2値「98」という驚異的数字を叩き出していた!

 だから、上部での2晩を生き延びられたんだね。

 ダニエルも気胸の処置に関しては、しなくて正解だっただろうと言っていた。

 この衛生状態でチューブを入れたまま、この先何日待たなければならないような状態はあまりに危険だから、ヒロの場合は処置をするリスクとしないリスクでは、しないリスクのほうが低いと考えられるよ。うん! 処置を拒否したのは正しかったね。

 その処置は今、ボクがしてもいいけど(あなたならお願いしたい!)このままイスラマに戻ったほうがいいと思うよ。

 えーん! 初めて、お医者さんらしい人が、お医者さんらしいことを言ってくれているよー!!

 ダニエルはそこから、直接、日本の金田ドクターに電話で私の状態を説明してくれた。そうして、ようやく正確な骨折情報が日本にもたらされたのであった。大変な手間だ。

 その結果、ドクターチームにより陸送提案はあっさり却下!!

 金田先生が言うにはもう、麻痺なり不随なりになってしまっているなら、もうどうでもよいと。這ってでも帰って来い! ということらしいんだが、ダニエルの説明によると状況は安定しているから背骨は動かさなければ、それ以上悪くなることはない、動かして、せっかく、出てない麻痺が出たらどーすんだ! ということだって。

 はー…待つしかないのか…。

 次は市場でテルテル坊主の材料を買ってきてくれー…。

 まだまだ、つづくー!!

Comments

3

おやじ

ひぇ~、ほんまにコンパネの上なんですね 早く続きが読みたいです

2

いよいよ加籐さん登場ですね! しかしまだ気が抜けませんねー。毎回ハラハラしてます。

1

matsu

うわぁ… (((゜д゜;))) 数日間動けなかった理由がわかりましたが… 大怪我すると本当に大変ですね… しかし心配して動いてくれる方々が大勢いるのは心強いですね♪ 大変だと思いますが治療とリハビリ頑張ってくださいo(^▽^)o