※このブログは
報知新聞社様のご協力により再掲出したものです。
尚、当サイトにおける公開は2020年1月20日です。
新エヴェレスト年 第5回
これはイギリスFROG社(1931-1976)の古いプラモデルです。(何年製かは不明)
箱に飛行機と共に描かれているのは・・・
そう!エヴェレスト!!
1933年4月3日
イギリスの複葉機、ウエストランド・ワレスPV-3 G-ACBRが航空史上初めてエヴェレスト上空を飛び越えることに成功しました。このプラモデルの説明書には誇らしげにその歴史がつづられています。
第一次世界大戦を経て飛躍的に進化した飛行機は1927年のリンドバーグによる大西洋無着陸横断の記録に代表されるように、この時代に多くの記録と歴史を創りだしました。
エヴェレスト上空を飛び越えることに成功したウエストランド・ワレスPV-3 G-ACBRは1931年からイギリスで製造されていたPV-6のプロトタイプで、ブリストル社ペガサスI.S.3エンジンにスーパーチャージャーを搭載し、閉鎖型のキャノピー、ヒーター(暖房用)、酸素吸入装置を装備した特別仕様機。
このプロジェクトはイギリス空軍の支援を受けて行われましたが、スポンサーであった「ヒューストン卿夫人」の名前から「ヒューストン・エヴェレスト・エクスペディション」と名づけられました。
そして、この飛行機も通称「ヒューストン・ウエストランド」と呼ばれています。
1933年4月3日・・・
ヒューストン・ウエストランドは、英国空軍中尉D.F.マッキンタイヤーの操縦により、カメラマンのS.R.ボンネット(Gaumont British社 映像制作会社)を乗せてインド(タライ平原のどっか?)から飛び立ちました。(PV-6が一機同行)
そして、ついに高度計は約34,000フィート(約10,000m)を指し示し、ヒューストン・ウエストランドはエヴェレスト上空を飛び越えることに成功!!
この時は、カメラマンのボンネットさん?か、カメラ?かの調子が悪くて(恐らくボンネットさんが低酸素で具合悪くなったんだろうな・・・)上空からの撮影ができず、4月19日に再び飛行して、上空からエヴェレストの精密な航空写真を撮影することに成功!
世界最高峰エヴェレストは、頂上に人類が足跡を印す前に、上空からの姿を見せることを許していたのです。
すでに、飛行機の到達高度記録としては1918年に8,810m、1921年には10,518mまで更新されていました。
これは、高高度飛行でスーパーチャージャーやターボチャージャーを搭載することの有効性が実証され、技術的革新があったこと、また、パイロットの酸素吸入の必要性がわかってきたことで飛行機は、より高いところまで飛ぶことが可能になってきたのです。
しかし、ただ高度が高いだけではなく、複雑な地形と気象条件の中でエヴェレストを飛び越えることは、当時、果敢な挑戦であり、そして大いなる成功だったことでしょう。
この成功のニュースは4月20日にイギリスのタイムズ紙に大きく掲載され、「ウエストランド・ワレス」と「ヒューストン卿夫人」の名前は広く知れ渡ることになったそうです・・・が、イギリスだけで盛り上がって、あまり世界的なニュースにはならなかったようですね・・・。
(エヴェレストの頂上上空を飛行機で飛び越えようとする挑戦は、これ以前にも何度か試みられていて、このウエストランド機による偵察もあったようです)
恐らく、これらの時に撮影された写真がエヴェレストの詳細な「地形図」を作ることに大きく貢献したことでしょう。
そして、今年はこの歴史誕生から75周年を記念して、イギリスでは当時の「ヒューストン・ウエストランド」を復元して再びエヴェレストを飛び越えようという計画があるようです。↓↓↓
http://www.wingsovereverest.com/index.php
天候にもよるでしょうが、きっと、初飛行の4月3日に合わせたいとこでしょうね。
ぜひ、成功のニュースを待ちましょう!
で!例の1934年のモーリス・ウイルソンさん・・・(新エヴェレスト年 第4回 参照)
彼のタクラミ!は、ヒューストン・ウエストランド成功の翌年。
彼が用意した飛行機がどんなだったのかは分からないけれど、恐らく、このヒューストン・ウエストランド機の成功とか、それ以前の成果とかに大いに影響されていたことでしょう。頂上直下までは行けなくても、そこそこイイとこまでは飛行機で行けるんではないか?と踏んだじゃないかな?
画期的なアイデアではあったね。確かに・・・登山史と航空史をクロスオーバーさせそうになったけどね。
しかし・・・もし!彼が飛んでいたら???
エヴェレスト初登頂者の名前は、モーリス・ウイルソンだったかも???
うーん・・・ちょっとヤダな・・・面白いけどね・・・。